TSEPについて
経済勉強会
有識者との討論会
ビジネス勉強会
活動報告
有識者インタビュー
資料室
書評

コンテンツ
スケジュール詳細
サイトマップ

ホーム > 新着情報 , 有識者インタビュー > 田中優さんインタビュー - 原発に頼らない社会とは?

田中優さんインタビュー - 原発に頼らない社会とは?


田中優さんインタビュー 平成23年10月27日


tanaka_in01.jpg


  みなさん、こんにちは。東京経済政策研究会代表の岩本です。

 10月27日に、日本のNPOバンクの第一人者であり、環境エネルギー問題に関する著書も多数執筆されている田中優さんに、TSEPが取材を行いました。

 田中さんに取材を申し込もうとしたきっかけは、TSEPの読書会でも取り上げた「原発に頼らない社会へ」の内容が非常に面白かったからです。反原発を唱える人はたくさんいますが、田中さんは実際に行動をされている点で一線を画しています。94年に日本初のNPOバンク「未来バンク事業組合」の立ち上げを皮切りに、桜井和寿氏、小林武史氏、坂本龍一氏などのアーティストが集うNPOバンク「ap bank」や国産材を使った木造長期優良住宅の供給を行う「天然住宅」など、環境保全の分野において多数の団体を運営されています。

 取材では、田中さんの活動の理念、経緯をお聞きするとともに、ご著書「原発に頼らない社会へ」の内容をもう一歩突っ込んでいろいろと質問させていただきました。その結果、ご著書の中には書かれていない、たくさんの情報を得ることができました。

 最後には、TSEP参加メンバーへのメッセージもいただいていますので、ぜひ楽しみながらご覧ください。


取材日時 平成23年10月27日 19:30 - 21:00
場所   喫茶室ルノアール池袋東口店


1.田中さんのこれまでの活動・取組について


-----田中さんは様々な団体を主宰・運営されています。どういった団体なのでしょうか?

私は1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに環境問題への関心を持ちました。またその資金源を調べることから、財政投融資を調べて「どうして郵貯がいけないの(北斗出版)」も出版しています。このような意識から様々な団体の運営に携わってきました。

例えば、未来バンク。これは、日本初のNPOバンクです。94年から始めましたから、もう17年ですね。スタートは7人合計で出資金400万円から始めました。当時は「そんなのうまくいかない」と周りから言われていました。しかし、10年やり続けて「うまくいくんだ」ということを証明できた。それで今では生協を母体とするNPOバンクなどが20ほどできてきています。

また、10年ほど前に、櫻井和寿さん、小林武史さん、坂本龍一さんらがap bankをつくることになり、そのお手伝いをしました。これは今も監事として続けています。環境保全活動に対する低利融資を行っています。

NPOバンク以外に、「天然住宅」という団体も運営しています。「天然住宅」では、国内の森を守れ、健康に害のない国産住宅作りをしています。

今の日本の住宅は短命すぎます。折角住宅ローンを組んで「一生の買い物だ」と言って家を買っても、60歳くらいになる頃には壊れるような状態です。それでまた、家を改修したりしなくちゃいけなくなってしまう。男性はローンを返すために生きているようなものになります(笑)。これでは、人々が貧しくなってしまいます。しかも家は「人生最大のゴミ」なんです。

だから本来、家と言うのは、長持ちして、価値の上がっていくようなものでなくちゃいけない。それを建築支援しているのが「一般社団 天然住宅」です。「天然住宅」では、300年使える木造の家作りを目標にしています。欧米のような長持ちする住宅を、木造で実現しようとする取組です。

住宅を作る時の土台工事に使うセメントと水の割合がどうかで土台のコンクリートの強度が変わってくるんです。水分が多いと、耐久年数が短かくなり、土台から崩壊してしまいます。天然住宅の土台工事では、水分の少ないコンクリートを使い、丈夫な家づくりを行っています。こういった工夫をすれば、300年続く家づくりは十分可能なんです。


-----田中さんはNPOバンクの運営をされていますが、例えば貧困層向けのグラミン銀行などがありますね。どういった違いがあるのですか?

グラミン銀行は貧困層向けに無担保融資などを行っていますが、それを真似して作られたマイクロクレジットは残念ながらサラ金同様のものになってしまっています。

私たちは、金融機関がフォローしない部分にスポットを当てています。金利固定、単利、2%程度の低利融資です。債務が雪だるま式に膨らまないよう、単利としているのが特徴です。

例えば、未来バンク、「天然住宅」では2%、apバンクでは1%、公益法人信頼資本財団では、無利子融資を実現しています。普通、金融機関やサラ金は連帯保証人を設定しますが、信頼資本財団では「信頼責任者」をおくだけです。信頼責任者とは、借り手の人格的信頼を保証する存在で、法的な保証責任は負いません。

金融機関は借り手の資産や土地の資産価値、収入状況しか見ません。それでは表面的な評価にすぎないのです。より重要なのは人格的信頼ですよ。

それから、私たちは地域密着を重視しています。地域密着で、借り手と貸し手の「顔」が見える関係を築くのです。お互いに「顔」が分かる関係だと返済率がぐっと上がります。

そして、信頼と実績。低利融資で資金供給できるのは長年ごまかさずに活動してきた結果でもあります。お金が集められるのは、この10年以上で信頼と実績を築いてこられたからでもあるのです。


-----NPOバンクの今後の可能性についてはどうですか?

未来バンクの累計融資額は10億円に上っています。また出資額も2億円に上っています。しかし各地域に作られるべきだと考えていますから、規模よりも各地域に作られることを優先しています。また規模の点では今後も飛躍的な拡大を期待することはできないでしょう。なぜなら、規制が厳しすぎるためです。

例えば、貸金業法の規制が厳しすぎて、中々規模を大きくできない。配当はできませんし、貸金業法の登録をしないと市民が勝手にお金を貸し出すということができないのです。実際にはお金が回らないと経済は活性化しないのに、です。

こうした日本の規制は特殊です。アメリカとかだと、お金の貸出しは国から許可されるようなものではない。むしろ市民の権利です。日本だとその権利がなく、護送船団方式の銀行以外では、貸金業法に登録しない限り貸すことは許されないのです。

私たちが、融資できるのはNPOバンクとして貸金業法の特例を得て登録しているからです。一方でこの特例の適用を受けるために、出資者に対して配当できないという縛りを受けています。そうした縛りがあるため、出資者を幅広く集められないのです。NPOバンク連絡会という組織を立ち上げ、内閣府などに働きかけて法改正を促そうとしていますが、規制がある限り、拡大ペースは遅くなってしまうのです。



2.原発問題について

-----今回の震災で、福島第一原発事故が発生し、世界的にも大きな問題となっています。この事故に対する田中さんの評価や見解はどうですか?

津波が原因と言っているけど、実際には地震で壊れています。日本は地震多発地帯で、本来、原発には向きません。例えば、イギリスのロイズで日本の原発に再保険をかけようとしましたが地震が頻発しすぎて危険だからと断られています。そのため今なお原発は地震や津波に対しての保険は掛けることができていないままです。

それ以外にも中越地震、IAEAからの勧告など、見直すチャンスはありました。しかし、東電はまともな対応をしてこなかった。教訓を生かさず、問題を先送りしてきたのです。

さらに今回の事故は経済システムを破壊しかねない可能性ももっています。例えば、金融。金融の担保として中心的なものが現在土地です。

しかし、今回の事故で放射能汚染されたホットスポットの家を、果たしてこれまで通りの値段で売ることができるでしょうか。当然担保価値が下がれば、これまで通りのお金を借り入れることは困難です。借入できないとお金が活発に世の中を回っていかない。だから経済システムを壊してしまう危険性があるのです。


-----田中さんは原発の廃止を訴えていますが、原発の廃止はどの程度のスパンで進めるべきと考えていますか?

すぐに廃止すべきです。現在、自然エネルギーによって原発の代替をする必要性が叫ばれていますが、実際には自然エネルギーがなくても原発を廃止することは可能です。

どうやればできるか?それは節電です。節電するだけで原発の廃止はできてしまいます。現在の電力はどうなっているかというと、電気は貯められないために電力のピークに合わせて発電所が作られています。

当然ですが、夏場の一時以外はピークになりません。そうなると、ピークになっているとき以外は発電所は、稼働していないために日本の発電所は負荷率(稼働率に近い)は極めて低いのです。ですから、節電してピークを抑えさえすれば、ムダな発電所は必要なくなり当然原発もいらなくなります。だから、節電さえできれば、原発を廃止するのに段階なんて必要ないのです。

tanaka_in02.jpg


電力の消費の76%が家庭以外の事業用です。ピーク時では90%が事業用です。企業の節電が適正にすすめば、電力消費はがくっと落ちるのです。企業がもっと節電を進めなければなりません。企業の設備を古いものから新しいものへ入れ替えれば、節電効果は飛躍的に改善します。なのに、企業は設備を入れ替えない。なぜか。節電に対するインセンティブがないからです。「電力を使えば使うほど料金が安くなる」ような料金体系では、企業が節電を進めるはずもありません。ここを「節電すればするほど料金が安くなる料金」に改めるべきです。


-----しかし、原発廃止に伴って電気料金の値上げが懸念されます。そうなると、空洞化の危険があるのではないですか?

現在空洞化が起きているのはむしろ円高のせいでしょう。電気料金のせいではありません。それに10年以上前から、日本の電気代は世界的に見てすでに高い。空洞化する部分はすでに空洞化しています。


-----現在、電力価格が引き上げられようとしていますが、その事に関してはいかがですか?

そもそも総括原価方式がおかしいのです。電力も自由競争をやらせれば、電気代は安くなります。
総括原価方式は、「必要になったコスト」に、「設備の固定費」部分に「適正報酬率」を掛けた額を加えて電気料金収入の総額になるやり方です。

しかしこの方式に原子力が優遇される仕組みが隠されています。例えば、将来のウランの買い付けの手付金に至るまで、固定費用に含めていて電気代を高くしています。宣伝・広告費、金利なども「必要になったコスト」に計上されてます。借りた金利が「適正な報酬率」に反映されるから、金融機関と癒着して異常に高い金利で借りている。これも電気代を引き上げている要因です。

このように、総括原価方式では費用をかけた分だけ電気代を高くすることができてしまうのです。こういう不透明な方式をやめて、電力価格は自由化すべきです。

総括原価方式をやめるためには、電気事業法の改正が必要となります。しかし、「何を原価とするか」は、一般電気事業供給約款料金算定規則(経産省令)で定められており、法改正をしなくても、経産大臣の決裁で、変更することができます。施行規則を改正し、原価の範囲を狭くすれば、かなり良くなると思います。

ちなみに、北陸電力は昔水力を使っていて電気代が安かったのに、原発を作ったせいで電気代は高くなりました。それでも他の電力会社よりはマシですが。


3.環境技術と再生可能エネルギーについて

-----現在の日本においてもっとも有力な環境技術はなんでしょうか?

蓄電池ですね。電気は貯められないというのが最も大きな課題です。電気さえ貯める事が出来れば、大きく変わります。

現在では電力消費には大きな波があります。大きな波があるせいで、余分に電力を作らないといけません。

蓄電さえできれば、作りすぎた分を貯めておくことができるようになります。今の負荷率は年間で60%程度ですから、40%の発電所は不要にできます。


-----再生可能エネルギーの推進が注目されていますが、誰が先導すべきでしょうか?企業でしょうか、それとも家庭でしょうか?

企業でも家庭でもなく、自治体です。戦前はたくさんの電気事業者があって、戦時中に接収されるまでは、自治体が大きなプレーヤーでした。戦後、九つの電力会社に分割された時、代わりに電力会社の株を受けました。例えば、東電の第5位の株主は、東京都です。中国電力は、山口県が筆頭株主です。電力会社も、主要株主である自治体の存在は無視できません。株式を交渉カードとして電力設備を自治体に取戻し、自治体先導で自然エネルギーの普及を進めていくのがいいと思います。それなら選挙でコントロールも可能になりますから。


-----日本で有望な再生可能エネルギーは何だと思われますか?

スケールメリットが「ある」ものと、「ない」ものの2種類に分けて考えることが重要です。

スケールメリットのあるものの代表格は風力発電です。風車の発電量は直径の二乗、風速の三乗倍ですから。したがって、風力発電は、大型が効率的です。家庭用の小型風力は厳しいです。

スケールメリットがないものとしては太陽光発電があります。太陽光はスケールメリットがないのでメガソーラーにしても効果が大きくなるわけではありません。効果が変わらないのですから、小さく設置した方が適しています。各家庭に分散して設置するのが適切です。

小水力も効率良いですね。水は大気の800倍の密度があります。小さなスペースでも大きなエネルギーを生み出すことが可能です。地熱も世界一の技術を持つのは日本ですし、条件も整っています。

また、海上発電も大きな可能性を秘めています。日本は海に囲まれていて、国土の11倍もあります。
ですから、海を使った方がいい。洋上風車や波力、潮力発電などは、莫大なエネルギーを生み出すポテンシャルをもっています。


-----菅前総理は「2020年に再生可能エネルギーの比率を20%にする」という方針を出しましたが実現できると思いますか?

やり方次第だと思います。再生可能エネルギーを増やすことが対策のすべてではありません。
例えば、節電を徹底して電力消費を半分にしさえすれば、再生エネルギーを全く増設しなくても比率を倍にできます。


-----震災復興にあたって、「スマートシティ」や「環境都市」などの構想が上がっていますが、どの様な都市を作るべきでしょうか?


 

tanaka_in03.jpg



仕組みが問題です。例えば、仮設住宅はプレハブ会社協会が独占してしまいました。天然住宅も、被災地向けに安価な住宅供給をしようとしましたが、仮設住宅には入札できませんでした。プレハブ会社が作っている仮設住宅は、効率がとても悪いです。断熱材が無いから、冬になったらまた改修しなくてはいけません。それでまた余計にお金がかかってしまう。我々は地域の材料と地域の人たちの力を使って、もっと安くて良いものを提供できるんです。ですから、こういった不公正な仕組みを正すことが必要です。

また、スマートグリッドについてですが、電力会社は乗り気ではないので「ニセスマートグリッド」になってしまっています。本当のスマートグリッドをつくりたいなら、電力会社を関与させてはダメです。


-----NPOとしては、復興にどのような形で貢献できるのでしょうか?

例えば、「天然住宅」は技術移転をやっています。住宅建設ノウハウを被災地の方に提供し、被災地の材料と被災地の人たちの労力で天然住宅を作ってもらう。地域でお金がまわり、雇用が生まれるためには、私たちが手を出すべきではない。地域の職人さん、建築士さんが集まって住宅を作れるようになることが大事です。そうやって地域でお金が回るようにすることは復興にも繋がります。


-----「恐竜」企業をなくし、地域分散型の経済を作るために必要と考えられる政策は何でしょうか?


 

tanaka_in04.jpg



アメリカのCRA法みたいなものが必要だと思います。CRA法は地域の小企業に対して金融機関の持つ資金の一定割合が地域に回るように義務化しています。つまりは地域でお金を回していく仕組みをつくることです。お金が地域で回らなければ、地域の再生はあり得ません。

また、信金・信組のように地域密着の金融は大事です。信金・信組を十分活用していくためには、政府が邪魔をしないことが必要です。例えば、小泉政権時代の不良債権処理では、中小企業への債権をムリヤリ「不良債権」扱いさせ、適正な基準に達していないとして地域金融機関を統廃合させてしまった。カネが回らくなったのですから、これで地域はガタガタです。

それから「いいものを作る」のではなく、売れるものを良いものにしていかなくてはいけない。そして新たな資金を稼げるようにすることより、今かかっている費用を削減したほうが効果的で簡単です。例えば、佐賀県の下水処理では、下水を分解することで1億5000万円もコストを削減することに成功しました。

こういった素晴らしいアイディアも、従来の利権を壊すことと、嫉妬深い自治体はマネをしたがらないから広がらないのです。こうしたものを積極的に受け入れる、革新性を持つべきです。


-----話は変わりますが、田中さんはap bankで坂本龍一さんや小林武史さん、桜井和寿さんと一緒にお仕事をされていますね。アーティストの方たちは、どういうきっかけで、環境保全活動に興味をもたれるのでしょうか?

坂本さんも桜井さんも、子どもが生まれたことがきっかけで環境保全活動に興味をもちはじめたようです。

女性は子どもが生まれた時点で親になりますが、男性は自分で意識しないと親にならない。
おふたりとも、環境問題に目覚めたとき、本当の親になったのかもしれませんね。


-----田中さん、お忙しい中貴重なお話ありがとうございました。最後に、TSEP勉強会に参加されている皆さんへ一言メッセージをお願いします。

知識は学校で得ることもできますが、今後の社会に必要になるのは「知恵」です。知恵の井戸からくみ上げていく努力が必要だと思います。それは常に現場にあります。現場を軽んじることなく、自由な発想と大胆な革新性を持って進めていってほしいと思います。



インタビュアー:岩本、山田、高橋
記事執筆・写真撮影:永井








メールマガジン登録
東京経済政策研究会FaceBookファンページ頑張ってます!「いいね」をよろしくお願いします。

Facebookページも宣伝

◆関連記事
・メディアでも活躍中の海老原嗣生氏と議論!「労働・雇用のウソ・ホント」 3月21日 (2012年2月17日 10:52)
・東京経済政策研究会(第21回)活動報告(テーマ:エネルギー政策) (2011年11月11日 13:52)
・メディアでも活躍中の尾崎弘之氏と議論!「環境ビジネスの現在と未来」 11月20日 (2011年11月 1日 10:51)
・経済研究会・読書会(第21回)ご案内『エネルギー政策』11月5日 (2011年10月11日 12:22)
・有識者との討論会(第2回)(山田昌弘先生)活動報告 (2011年7月29日 16:29)

Google
Web このサイト


読書会を毎月開催 - TSEPのブログ
メディアの方へ
日経アソシエに掲載されました
雑誌 社会教育に掲載されました
ブログ更新情報
RSS表示パーツ
新着更新記事
メールマガジン
Feed


東京経済政策研究会

Facebookページも宣伝